作り手の心が宿るとき
まるで、コンサートでティナ・ターナー、アレサ・フランクリン、ジャニス・ジョプリン、ビヨンセが一堂に会したかのような、圧倒的な感動が「エステール」での食事にはありました。
といってその圧倒は、濃厚で重厚な低音が響くようなものではなく、あくまで軽やかで、清涼感あふれる皿の数々によってもたらされました。
最初の一皿から、野菜の甘さと滋味が深く印象的でしたが、コースが進むにつれて、メインディッシュを引き立てるように、野菜そのものが鮮やかに際立ってきました。
ちょうど同伴者が席を外したタイミングで、ソムリエの方が話しかけてくださったのですが(その絶妙なタイミングも素晴らしかったです)、鎌倉在住のシェフが鎌倉野菜を使用しているとのこと。そして、そのシェフが以前「ベージュ」にいらっしゃったと知り、納得しました。
以前「ベージュ」で感動した鎌倉野菜の滋味が、シェフと共に、この「エステール」に確かに息づいていたのです。
単に野菜をいただいているはずなのに、なぜかその野菜が育った畑や土壌にまで想いが巡りました。それはきっと、シェフが鎌倉のテロワールを深く愛し、その土地と対話しながら選び抜いた野菜たちと、さらに語り合いながら丁寧に調理されているからに違いありません。
単なる野菜に、それ以上の愛着や、奥深い魅力を引き出せるかどうかは、やはり作り手の感性によるものだと改めて感じました。
それは、私にとって、ただ布を縫い合わせただけのものを洋服と呼ぶのではなく、誰のために、どんな想いを込めて創ったかによって、作り手の心が宿ると信じていることに似ています。シェフが食材を慈しんでいるかどうかは、やはり、料理を通して伝わってくるものだと感じました。
また、鎌倉という土地の豊かな恵みを用いながら、目の前に広がる皇居の景色を背景に、この場所ならではの東京らしい洗練されたフレンチへと昇華させていることの素晴らしさ。
ユーモアと機知に富んだ会話、そして何よりも真摯に仕事に取り組む姿勢が垣間見え、良い仕事をすることへの刺激を改めていただきました。
編集後記
エステールに伺った2023年10月の日記をやっと、整えての今更(2025/04/24)の投稿です(笑)。情報古くなっていたら下記で最新チェックください。
レストラン エステールhttps://www.instagram.com/esterre_restaurant/
レストラン ベージュhttps://www.instagram.com/beige_restaurant/