重力に抗(あらが)い、軽やかに舞い

わたしは、着る人の身体と衣服の間に生まれる空間と余白、そしてそこに宿る空気を意識してフォルムをデザインしています。私たちの服作りにおけるモットーは、そのフォルムが着る人の心をどれだけ高揚させ、その高揚感を瞬間に留めることなく持続させ、さらに加速させられるか、ということです。まるで重力に抗い、軽やかに飛び上がった瞬間の高揚感が永続するようなデザインを追求しています。

布は重力によって下に落ち、大地に引かれてしまいます。わたしが目指すのは、ふわりと空中に舞い上がり、一瞬静止したかのような軽やかさを宿す洋服です。重力に縛られず、飛び上がったその瞬間を「永遠」にするかのように。私たちの服を身につけることで、まるでスタート地点がぐっと高くなったような感覚で、その一日を始められる。そんな洋服を届けたいと願っています。

自分が20代の頃に、1950年代のディオールやバレンシアガの作品に深く魅了されて以来、ぼくは洋服のデザインにおいて、特にフォルムこそが、あらゆる想いを宿すものだと信じるようになりました。理想のフォルムを実現するためには、生地のコシやハリのこだわり、見えない内部構造に工夫を凝らすことがもちろん不可欠です。

胸がすくような爽快感や、深く呼吸するたびに広がるような心地よさは、着る女性の描く未来を豊かなものにします。心理的な解放感や、身体を伸びやかに表現できる自由な感覚を得られる、洋服を創造したいと願っています。